放射線でがんが治療できるしくみ
放射線は物体を透過する能力を持っています。放射線を身体の外から深部のがん病巣に向けて照射すると、がん細胞に小さな傷をつけることができます。1回の放射線による傷ではがん細胞は死にませんが、照射を10~30回繰り返すことで傷が蓄積し、がん細胞は耐えきれずに死滅していきます。身体の深部にあるがん病巣は正常な臓器や組織に取り囲まれていますので、身体の外から放射線でがん病巣を狙う場合、放射線の通り道にあたる正常細胞も、がん細胞と同じように放射線による傷を受けます。
正常細胞は少量の放射線による小さな傷であれば、数時間のうちに自力で修復する能力を備えていますが、がん細胞は傷の修復力が低いため、繰り返しの放射線照射で傷が蓄積して死滅し、正常細胞は傷の修復力が強いため、最終的なダメージは小さくて済むわけです。これが「正常臓器にやさしく、がんに厳しい」といわれる、放射線治療独特のメカニズムです。