症状・治療
腎臓の働き・透析を始めるタイミング
腎臓の働き
腎臓の代表的な働きは尿をつくることです。血液を濾過して老廃物や塩分を尿として体外へ追い出してくれます。また、体に必要なものは再吸収し、体内に留める働きをしています。
慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病とは腎臓の働き(eGFR)が低下したり、蛋白尿が出るなどのいずれかが3か月以上持続する状態で、一つの病気の名称ではなく、腎臓の働きが徐々に低下していく様々な腎臓病の総称です。
1) 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30㎎/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要
2) eGFR(推定糸球体濾過量)<60ml/min/1.73㎡
CKDが進行するとどうなる?
腎臓病は初期には自覚症状はありませんが、腎臓がかなり悪くなってくると症状が出てきます。頭痛や手足のむくみ、疲労感、吐き気、嘔気、息切れなどの症状です。
腎不全の診断基準は?
腎臓の働きを判断するのに利用する代表的な数値が、血清クレアチニン値で、血液中のたんぱく質の濃度で調べます。腎障害を示唆する所見(特に0.15g/gCr以上の蛋白尿もしくは30mg/gCr以上のアルブミン尿がある)が基準になり、数値の高い人は腎機能が低下していると考えられます。
もう一つはeGFR(推算糸球体ろ過量)という指標で、腎臓が1分間にどの程度、尿のもとを作ることができるかが分かります。これは数値が低い人ほど腎機能が低下しています。この2つの指標と尿中のたんぱく質から腎臓の状態を評価します。つまり、血清クレアチニン値が高いほど、またeGFRが低いほど、腎臓の働きが低いと診断されるのです。健康な人なら100ml/分/1.73m2なので、eGFRが60だと、腎臓機能は健康な人の約60%に低下していると考えられます。
透析の理解
血液透析とは?
腎臓に代わって様々な役割を果たしてくれる治療法が必要になってきます。全ての役割を果たせる治療法は腎移植しかありませんが、腎移植を行わない場合に、腎臓の最も重要な役割である、「余分な水分・塩分や老廃物の排泄」を代行してくれる治療法が透析です。
透析には、「血液透析」と「腹膜透析」という2種類の方法があり、医師やご家族と相談の上、ライフスタイルなどを考えて患者さん自身で選ぶことができます。また、必要に応じて、途中で透析方法を変更しなければならないときもあります。
ただし、透析は腎臓の機能を回復させる治療法ではありません。そのため、途中で腎移植を受けない限りは、生涯続ける必要があります。
また、余分な水分・塩分や老廃物の排泄ができるといっても、健康な腎臓と同程度の役割が果たせるわけではありませんし、透析では補えない腎臓の機能もあります。そのため、多くの場合、透析療法に加えてさまざまな薬の助けも必要になります。よりよい透析生活を送るためには、食事の内容や塩分・水分などの摂取量に気をつけるなど、自己管理も大変重要です。
血液透析(HD:Hemodialysis)は、人工腎臓とも呼ばれ、機械を使って血液をろ過する方法です。
腕の血管に針を刺し、血管と透析機器を2本のチューブでつなぎ、
①ポンプを使って血液を体外へ送る→
②ダイアライザー(透析器)を通して老廃物や余分な水分を透析液に移す→
③きれいになった血液を再び体内に戻す、
という一連の流れを、循環させながら行います。
透析前に必要な「内シャント」
血液透析では、1分間におよそ200mL(標準値)の血液を体外へ取り出し、ダイアライザーの中へ送り込まなければいけません。その血液量を確保するには、たくさんの血液が流れる太い血管が必要です。
そこであらかじめ、手首近くの動脈と静脈をつなぎ合わせて、静脈を太く発達させる手術を行います。このつなぎ合わせた部分を、内シャントと呼びます。
通常、内シャントは、利き腕ではない方の手に作ります。透析で使えるようになるまでに2〜4週間かかるので、前もって計画的に手術をします。また、自分の血管でシャントを作るのが難しい場合は、人工血管を使います。